『四畳半襖の裏張り』を観たよ。
自分が生まれるより前に劇場公開されていたと思えば、刺激的な映像なのかなぁ。
『四畳半襖の裏張り』
1973年・日本・72分
監督・脚本:神代辰巳
製作:三浦朗
原作:永井荷風
助監督:鴨田好史
撮影:姫田真佐久
編集:鈴木晄
出演:宮下順子 江角英明 丘奈保美
山谷初男 絵沢萠子 芹明香 他
ときは大正。日本は米騒動で揺れに揺れていた。そんな中、山の手の色町に生きる芸者の袖子(宮下順子)は、床入りした客の信介(江角英明)にとらわれる自身に戸惑う。一方、シベリア出兵を控えた男が意中の芸者に逢いに来るなど、花街の人間模様は慌しくて……。
いわゆる日活ロマンポルノのひとつ。神代監督の作品を観るのは、『ベッドタイムアイズ』以来。製作順は、『四畳半襖の裏張り』のほうが、ずっと早いけれど。
この映画の原作である永井荷風の『四畳半襖の下張り』を中学生の頃に読んだのだが、まったく意味がわからなかった。内容が理解できなかったというよりは、昔の文体を読み解けなかったのだ。今読めば、印象はまったく違うのだろうな。『四畳半襖の下張り』は短編小説と春本の2種があって、いずれも荷風作と言われているけれど、春本のほうの作者は「金阜山人」となっている。とはいえ、こちらも間違いなく荷風作であろう、という説が有力。いずれにせよ、後年、猥褻論議の裁判沙汰にもなった、いろいろとお騒がせな『四畳半襖の下張り』。映画化もされたとは知らなかったので、レンタル・ショップでDVDを見つけて興味をそそられ、つい借りてきてしまった。
前述した通り、荷風の小説を読んだときに意味不明だったので、この映画がどのくらい原作を踏襲しているのかを判断することは全然できない。また、日活ロマンポルノに詳しいわけでもないから、このジャンルにおいて今作の映像のいやらしさがどの程度なのかも、正直、よくわからない。
ストーリィは目新しくない。花街で出逢った男と女の情交と近い将来、というだけだから。サイレント風の字幕や前衛的な戦争シーンが挟まれるなど、構成や編集は個性的。ただ、その手法に私はあまり好感がいだけなかった。物語の流れが分断されることに違和感を覚えてしまったのだ。もちろん、単に好みの問題。
現代には、露骨な性描写が含まれる映像はたくさんあるし、AVというダイレクトな媒体もあるしで、そういうものと比べたら、この映画はまったくエロくはなかった。ただ、時代が時代ゆえか、今作には「見えないエロティシズム」がふんだんに漂ってはいる。たとえば、主人公の袖子が、「蒲団の中に隠れた見えない爪先で、 信介に『なにかしている』んだろうなぁ」と観ている側の想像をそそるシーンがある。こういうのって、感覚に訴えかけてくる婉曲の官能性だ。あからさまに見せられるよりも、ずっとセクシー。ずっと卑猥。きっと、凄まじく「耽美」なのだ。
袖子の周囲にいる芸者たちの描写も、純粋に面白い。「話には聞いたことあるけど、こういう『下』の技や訓練って、本当にあったのかなぁ」と驚きつつも感心してしまうような行為を実際に見せてもらえる。あ、フィクションの映像だから、「実際」ではないのか。でも、インパクトはあるよ、かなり。好奇心を相当くすぐられもするしね。
観た日:2007年2月4日(日)@自宅にてDVD
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