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2007年02月03日(土)

『ヘンダーソン夫人の贈り物』を観たよ。

 やっぱり嫌だよ、戦争は。

『ヘンダーソン夫人の贈り物』
原題:"MRS.HENDERSON PRESENTS"
2005年・イギリス・103分
監督:スティーヴン・フリアーズ
製作:ノーマ・ヘイマン
製作総指揮・出演:ボブ・ホスキンス
製作総指揮:デヴィッド・オーキン フランソワ・イヴェルネル 他
脚本:マーティン・シャーマン
撮影:アンドリュー・ダン
編集:ルチア・ズケッティ
音楽:ジョージ・フェントン
出演:ジュディ・デンチ ウィル・ヤング ケリー・ライリー
   クリストファー・ゲスト セルマ・バーロウ 他

 1930年代のイギリスに、ひとりの名物未亡人がいた。富豪のヘンダーソン夫人(ジュディ・デンチ)で、夫に先立たれてすっかり暇になった彼女は、ふとした気まぐれで、ウィンドミル劇場というホールを買い取ってみる。オーナーとなったヘンダーソン夫人は、ユダヤ人のヴァンダム(ボブ・ホスキンス)を支配人として雇った。ときには喧嘩しながらも、ウィンドミル劇場を切り盛りしていくふたり。しかし、最初のうちは盛況だった劇場も、やがて閑古鳥が鳴くようになる。集客のための手段として、ヘンダーソン夫人は「踊り子の服を脱がせればよい」と提案した。そうして、イギリスでは前代未聞のヌード・レビューを行うことになるわけだが……。

 私にとっては、かなり大当たりの作品。とても笑って、とても泣いて、とても感動して、とても心に残る映画となった。実話をベースにした物語とのこと。どこまで事実に即しているのかは、わからないけれど。

 レトロ調のアニメーションを使ったオープニングが、まず可愛い。そんなこんなでキュートに幕をあけた物語はテンポのよいコメディで、呆れてしまうほど単純に、都合よく話が進んでいく。超有名なベテラン役者のジュディ・デンチとボブ・ホスキンスのふたりが、まるで漫才でもしているかのごとく、軽快で朗らかな雰囲気でストーリィを展開していくのだ。ウィンドミル劇場で活躍する踊り子たちもまた、豊満なプロポーションと笑顔に色気や魅力がたっぷりで、見ていてすこぶる愉しい(『スパニッシュ・アパートメント』等にも出演していたケリー・ライリーが、繊細さと気丈さを兼ね備えたモーリーンという舞台出演者役を美しく演じていた)。しかし、ある時点を境に、物語は突如として、重く、暗く、切なく、激しく、物々しくなる。第二次世界大戦が始まってしまったからだ。また、先の第一次大戦にまつわるヘンダーソン夫人の哀しい過去も浮き彫りになってくる。以降、劇中から笑いの要素は消え、戦争に巻き込まれざるをえない一般人たちと、戦地に赴かんとする若い兵士たちの描写が続く。しかし、確かに笑いは消えたけれど、人々の心から、音楽と娯楽と、なにより「希望」は消えない。決して、褪せない。ひたむきで懸命なその姿を見ていると、戦争の無益な残酷さと、人間の頼もしいしぶとさと生命力を改めて教えられ、涙があふれて止まらなくなってきてしまった。

 わがままだけれど愛らしい老婦人が劇場のオーナーになるという、贅沢で大がかりな趣味の話かと思ったら、実はそうとは言えなかった。お洒落で、粋で、華やかな映画ではあるけれど、この作品は、紛うことなき「反戦映画」なのである。

 当然ながら、映画にだって好みや相性がある。だから、映画を薦めたり薦められたりということが、私はあまり好きではないのだけれど、この作品に関しては久々に心底から思った。願った。「ひとりでも多くの人に観てほしい映画だ」と。たくさん笑えた。たくさん泣けた。たくさん考えさせられた。ただ、そういった「たくさん」がバランスよく含まれていたという以前に、もうとにかく、正面からまっすぐに、めちゃめちゃ面白くてたまらなかったのだ。

 気に入ったかそうでないかは別問題となるのだけれど、スティーヴン・フリアーズの監督作は、私的に印象の強い場合が多い。『マイ・ビューティフル・ランドレット』、『危険な関係』、『グリフターズ/詐欺師たち』、『ハイ・フィデリティ』、そして、今作『ヘンダーソン夫人の贈り物』。どれも胸に強烈だった。こうしてタイトルを羅列してみると、フリアーズの個性が幅広くて多彩であることに、改めて驚く。

 歌とリズムにあふれたレビュー・シーンが重要なこの映画で音楽を担当したのは、大御所のジョージ・フェントン。彼が音楽を手がけた作品を私は書ききれないほど観ていて、その中で惚れ込んでしまった作品もまた、書ききれないほどある。だけど、少しだけ書いてみると、『やさしくキスをして』、『センターステージ』、『ユー・ガット・メール』、『娼婦ベロニカ』、『ぼくの美しい人だから』、『チャーリング・クロス街84番地』などなど。

 今作でシナリオを担当したマーティン・シャーマンは、私が思い入れと信頼を預けたい脚本家のひとりだ。同じく彼がシナリオを書いた『ベント/堕ちた饗宴』と『カーテンコール』(1996年)は、ゲイを扱った映画としていずれも忘れられない。前者は壮絶さで。後者は温かさで。忘れられないだけでなく、記憶の宝物として大切でたまらない作品である。

観た日:2007年1月14日(日)@bunkamura ル・シネマ

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ヘンダーソン夫人の贈り物@映画生活
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