『クローサー』(2004年)を観たよ。
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深読みのし甲斐がある物語だよ、これは。
『クローサー』(2004年)
原題:"CLOSER"
参考:クローサー@映画生活 クローサー-シネマトゥデイ
2004年・アメリカ・103分
監督・製作:マイク・ニコルズ
製作:ケイリー・ブロコウ スコット・ルーディン 他
製作総指揮:セリア・D・コスタス ロバート・フォックス
原作・脚本:パトリック・マーバー
撮影:スティーヴン・ゴールドブラット
音楽:モリッシー
出演:ジュリア・ロバーツ ナタリー・ポートマン
ジュード・ロウ クライヴ・オーウェン 他
舞台はロンドン。作家志望のダン(ジュード・ロウ)は、ニューヨークからやって来たアリス(ナタリー・ポートマン)が事故に遭う現場に居合わせ、彼女を介抱したそのとき、恋にも落ちる。共に暮らし始めるふたりだが、しばらくしてカメラマンのアンナ(ジュリア・ロバーツ)に出逢ったダンは、瞬時にして彼女に魅入られてしまう。その後、ダンの悪趣味ないたずらにより、アンナは医者のラリー(クライヴ・オーウェン)と出逢うことになって……。
演劇の世界では有名な戯曲がオリジナルで、その台本を書いた原作者であるパトリック・マーバーが映画用にシナリオを脚色したという。贅沢なことだ。
観終えたあとに、じわじわと利いてくる映画である。観ているあいだは、「映像的には見映えのよいシーンがたくさんあるし、役者さんたちはみんな巧いし、理解もしやすい構成だけれど、ラヴ・ストーリィの『上っ面』を切り取っただけの映画で、あんまり面白くないなぁ」と思っていたのだ。しかし、その上っ面の「裏の部分」が、エンド・ロールを観終えたあとに、気になって気になってたまらなくなった。にわかに、想像力がフル回転した。その結果、「濃い映画だったなぁ、これって」と呆然としてしまったのだ。
時間的展開がかなり早かったり、前後が交錯したりする。混乱は招かないのだが、「早急だなぁ。あっさりしすぎているなぁ」という印象はもたらされるかもしれない。ただ、映像にはならなかった「時間」になにがどのようにあったのか、を考えると、俄然、面白くてたまらなくなってくるのだ。無論、それを考えさせるのに充分な材料が、作品の至るところに散りばめられている。
キャスティングが絶妙。常にテンションが低めで、気遣いは上手だが、思いやりのぬくもりがあまり感じられない大人の女・アンナを、ジュリア・ロバーツがさも現実的に演じた。ジュリアというと、「笑顔が弾ける、いかにもアメリカ的な明るい女性の役」という印象が強いので、今回のアンナ役のような、終始ダウナーで疲れを隠さないくたびれた様子の役は新鮮だったが、とても上手だったのだ。そんなアンナとは対照的な、若くて扇情的で一途で、どこかロリータ的な魅力も持ち合わせているアリスを演じたのが、ナタリー・ポートマン。「すれているけれど、可愛らしくて背伸びが微笑ましい、男好きするいい娘(こ)」というステレオ・タイプの役柄を、ナタリーが余裕たっぷりに体現したが、ナタリーの今までのイメージからすると、少々「汚れ役」に近いのかもしれない。だが、巧かったと思うし、合っていたとも感じた。コケティッシュな部分と稚さを持ち合わせている彼女のプロポーションの魅力も、十二分に活用してくれていたし。典型的なダメ男だけれど、女が惹かれてやまない天性の吸引力を持ち合わせているダンは、ジュード・ロウのはまり役だった。一見、「情けない男」を地で行っているかのようなラリーだが、蓋をあけてみたら誰よりも計算高くて頭がよかった男。そんな男に、クライヴ・オーウェンがはまらないわけがない。
オープニングとラスト・シーンが素晴らしい。それぞれがリンクしている点と、ナタリー演じる女が見せる表情と雰囲気の違いが秀逸なのだ。彼女から漂う始めと終わりの「生きかた」の差異が、この物語の本質を語ってくれているように思うから。
『クローサー』を観て実感したことが、もうひとつ。有名で美しい役者・4人が、一見表面的な物語を創っているというのに、そこからはしっかりと一般人の「体臭」が立ち昇ってくるのだ。生々しくて、汗や性の臭いがしっかりと鼻につく「体臭」。思わず遠ざかりたくなるような、如実で人間ならではの「体臭」。特に、キス・シーンにそれを感じた。……だからこそ、個人的には、深読みに愉しさが備わった作品なのである。「心地よくてすがすがしい香り」だけが漂う恋愛なんて、真実ではないのだもの。実際の嗅覚が感じるそれについてももちろんだけれど、心の嗅覚が捕らえる対象にこそ説得力があると、この映画を観て、改めて心底から思った。
そして、もしも私が男だったら……、確かにアリスに惹かれはするけれど、最終的にはアンナを選びたくなる。「情熱を表には出さないけれど、地に足のついた女」の横を歩きたいか、「危なっかしいけれど、直観や直感に従う女」を護って生きたいか、アンナとアリスのどちらを取るかというのは、そういう意味だと思うのだけれど、私は前者。まあ、映画の感想とは、全然関係ないことだけれど。
マイク・ニコルズは、本当に多才で多彩な監督だと思う。出世作『卒業』でほろ苦い青春ムービーを撮ったかと思えば、『心みだれて』や『心の旅』では味わい深いドラマを仕立て、『ウルフ』ではジャック・ニコルソンを狼男にし、『バードケージ』や『パーフェクト・カップル』では抱腹絶倒のコメディを撮ってくれた。都会的なシンデレラ・ストーリィの『ワーキング・ガール』は愛する映画の1本だし、『ハリウッドにくちづけ』や『シルクウッド』、『バージニア・ウルフなんかこわくない』も記憶に残る映画である。実は、かなり好きな監督さんだ。今年75歳とは信じられないくらいの瑞々しい感性を持ったニコルズが2004年に撮ったのが、『クローサー』。あの若々しい葛藤や映像を70歳代の監督が体現したとは一瞬信じがたいのだが、この作品の奥深さや「裏の意味」の多さを思うと、長く生きている人ならではの手腕が、存分に、かつ、余裕たっぷりに発揮されていると言えるようにも思う。そういえば、エイズを真正面から扱った2004年のTVM『エンジェルス・イン・アメリカ』もニコルズが監督したんだよな。DVDを借りてこなければ……。
観た日:2006年11月30日(木)@自宅にてDVD
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クローサー:或る日の出来事さま
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2007/04/04 | さくらの映画スイッチ |
クローサー
カラダを重ねるたび、唇が嘘を重ねる。ロンドン、不倫、孤独、四角関係。 原題 : CLOSER 監督 : マイク・ニコルズ
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クローサー
パトリック・マーバーによる戯曲を映画化。ロンドンを舞台に、フォトグラファー、小説家、ストリッパー、医師の4人の男女が繰り広げる大人の恋愛を描いたドラマ。