『手紙』を観たよ。

►2006/10/12 00:25 

 その「美しさ」が、リアリティの邪魔をした。

『手紙』
参考:手紙@映画生活 手紙-シネマトゥデイ
2006年・日本・121分
監督:生野滋朗
製作:宇野康秀 大澤茂樹 他
プロデューサー:朴木浩美 橋口一成
エグゼクティブ・プロデューサー:河井信哉 星野有香 他
原作:東野圭吾
脚本:安部照雄 清水友佳子
撮影:藤石修
編集:川島章正
音楽:佐藤直樹
出演:山田孝之 沢尻エリカ 玉山鉄二
   吹石一恵 風間杜夫 杉浦直樹 他

 直貴(山田孝之)は大学進学を諦めた。なぜなら、兄(玉山鉄二)が殺人犯として服役しているから。直貴は初めて愛した恋人(吹石一恵)と別れざるをえなかった。なぜなら、兄が終身刑を宣告された殺人犯だから。直貴はお笑いタレントとして生きる夢を捨てなければならなくなった。なぜなら、兄が犯罪者だとインターネットでばらされてしまったから。苦悩の一方で、直貴は刑務所にいる兄と手紙のやり取りを続けている。そもそも、兄が殺人を犯してしまったのは、弟である直貴の学費を得たいがためだったのだ。また、直貴の知人の由美子(沢尻エリカ)は、彼を慕うがゆえに、勝手ながらも健気な行動を繰り返して……。

 東野圭吾先生の有名な原作は未読。

 瑕のない佳作なのだろうと思う。起承転結は巧みで、主要登場人物を演じた役者陣は上手かつキャラクターにはまっていて、121分の上映時間を、飽きさせずにエンド・ロールまで見させる力があった。

 ただ、その「瑕のなさ」ゆえに、印象が薄かったようにも感じる。

 加えて、あくまでも個人的な手応えだが、「教科書的で、作り物の匂いがする感動作」すぎて、その要素がいちいち鼻についてしまった。たとえば、直貴の兄が犯罪に手を染めた理由が「弟の学費のため」という点。たとえば、直貴が愛して別れざるをえなくなった恋人が「深窓の令嬢」であった点。たとえば、直貴を慕う由美子が「なにがあってもへこたれなくて、一途で健気で、おまけに美人の、『タッチ』の南ちゃんのような女の子(つまり、「いそうで決していない娘」)」であった点。

 こういう点が悪いとは思わないし、感動をそそる要素では確かにありうるのだけれど、これらが揃いすぎると、「できすぎだよ、ちょっと」と私は失笑したくなってしまうし、なにより、「嘘っぽく」見えてたまらなくなってきた。その嘘っぽさを煽ったのが、贅沢で皮肉なのだけれど、メイン・キャラクターを演じた役者さんたちの容姿の美しさだ。精悍さとキュートさのバランスが魅力的な山田さん、服役囚の格好をしていても飛びぬけて凛々しい玉山さん、非の打ちどころがないお嬢さまっぷりを体現してくれた吹石さん、そして、見惚れること必至なかわいさと輝きを放っていた沢尻さん。……綺麗すぎた、この4人。4人が4人とも「現実離れの美しさ」をしていた。みなさん、演技はナチュラルで、素直に「巧い役者さんだなぁ」と心から思えはしたのだけれど、揃いも揃って容姿が「選ばれし芸能人」でありすぎてしまい、この4人が繰り広げる映像からリアリティを感じ取ることが、私には難しくなってしまったのだ。もちろん、美しい外見をした俳優さんばかりが出演していても、とびきりの現実性を感じさせてくれる映画は、世の中にたくさんある。だから、出演した役者さんのせいではなくて、作品の撮りかたや手法に私は違和感を覚えたということなのだろうとは思うのだけれど、映画のストーリィやテーマよりも出演者の容姿に私が気を取られてしまったのは確かだった。

 そんなわけで、退屈せずに観ることはできたけれど、泣いたり感極まったり興奮したり……、という衝動には、終始まったく襲われず、冷静で落ち着いたままだったのだ。

 個人的に一番の収穫だったのは、沢尻エリカさん。映画でもテレビでも出演作が相次いでいる女優さんだけれど、「この人が沢尻さんだ」と意識してしっかり観たのは、今作が初めてだった。雑誌やインターネットでちらっと写真を見ていた限りでは、特に興味をそそられたことがなかったのだが、今回、映像の中で動いて演じている沢尻さんを見て、「多方面から引っ張りだこになる人は、なるべくしてそうなっているんだな……」とすこぶる納得してしまったくらい、文句なく勢いがあって、文句なく演技が上手で、文句なく綺麗だった。沢尻さん演じる由美子は、物語の冒頭で「眼鏡をかけた、地味な少女」として登場するのだけれど、どこからどう見ようが、「ぱっとしない眼鏡っ子」になんてなりえない。あまりにも美少女すぎて。外見が美しいだけでなく、みなぎる生命力を感じさせてくれる女優さん。沢尻さんが出演するほかの作品も、ぜひぜひ観たくてたまらなくなった。

試写日:2006年10月2日(月)@スペースFS汐留

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