『タッチ』を観たよ。
私がこの映画をかなり楽しめちゃったのは、「最近一番お気に入りの監督が犬童一心さん」で、もともと自分は「あだち充先生の原作とアニメの『タッチ』がそれなりに好きで、内容をよく知っていた」というのがあり、とはいえ、だからといって「原作やアニメの『タッチ』に、ものすごく思い入れがあるほどはまっていたわけではない」ということ。……これらの感覚が、大きく影響していたと思われる。
『タッチ』
2005年・日本・116分
監督:犬童一心
製作:本間英行
原作:あだち充
脚本:山室有紀子
撮影:蔦井孝洋
音楽:松谷卓
出演:長澤まさみ 斉藤祥太 斉藤慶太 RIKIYA
風吹ジュン 宅麻伸 平塚真介 小日向文世 他
上杉家の双子の兄弟である達也(斉藤祥太)と和也(斉藤慶太)は、隣の家に住む幼なじみの浅倉南(長澤まさみ)と、ずっと一緒に仲よく育ってきた。野球が大好きな三人の幼い頃からの夢は「甲子園」。高校生になると、和也は明星学園野球部のエースとして「南を甲子園へ連れていくため」に日々頑張り、南はその野球部のマネージャーをしていて、そして、達也は、一見特に目的もなさそうな日々を悠々と送っていた。達也は南が好きだった。また、和也も南が好きだった。三人はもう、単なる「幼なじみ」ではいられない年齢になっていたわけだが……。
私くらいの世代の者にとって、あだち充先生の『タッチ』と『みゆき』っていう作品は、好きとか嫌いとかいう以前に、ほぼ社会現象であり、一種の「歴史」のような存在だったんじゃないかと思う。高橋留美子先生の『うる星やつら』や『めぞん一刻』みたいにさ。「ストーリィは知っていてあたりまえ」っていう感じ。
「どうして今更『タッチ』を実写映画化しなきゃならないんだ?」と、正直、訝しく思った。観終えた今ですら思っている。結論を先に言うと、「長澤まさみのおかげ」で、この実写版『タッチ』はまあまあ成功だったと思う。ただ、なぜ「まあまあ」程度なのかというと、この映画を観ている最中の高揚や感動のほとんどは「原作やアニメの『タッチ』を知っているからこそ得られたもの」だったからだ。
ロング・シリーズだった『タッチ』を、急いたり尻すぼまりになったりすることもなく上手にまとめた映画ではあった。たった116分の作品であるのに、『タッチ』の名シーンの数々は上手に生かされているし、「よくぞこの台詞を使ってくれた!」と拍手したくなる部分も多々あったし、岩崎良美さんの例の曲『タッチ』を(カバー曲ではあったけど)挿入するタイミングなんて絶妙だったし。
だけど、こういう賞賛の感慨って、繰り返しになっちゃうけど、「私が原作やアニメで『タッチ』のストーリィを熟知しているからこそ味わえたもの」でしかないんだよね。逆にいえば、もともとの『タッチ』を知らないと、「ただのありふれた青春スポーツ恋愛モノじゃん」ってことにしかならないと思う。で、「ただの青春スポーツ恋愛モノ」としては、正直、インパクトも魅せかたも、ちょっと古くさいっていうか、目新しくないんだよ。当然だよね。だって、オリジナルは昔の作品なんだからさ。そもそも、「青春スポーツ恋愛モノ」の原型を作ったくらいの名作がオリジナルの『タッチ』だと思うんだけど、今現在、『タッチ』という物語にこの実写映画で初めて触れる人がいるとしたら、……『タッチ』の偉大な歴史を知らずとも、果たして感動できるものなのかどうか。私は「否」のような気がしちゃう。なんとなく。
とはいえ、ばっちり『タッチ』世代だった私は、この映画を観ながら散々感動しまくって、散々うるうるぼろぼろ泣いたさ。中でも、最も衝撃を受けたのは、長澤まさみさんの存在。っていうか、彼女が体現した「南ちゃん」の存在。なんかもう……、「かわいい」とか「純粋」とか「無垢」とか、そういう単純な言葉で表現すると、この女優さんと南ちゃんをかえって穢しちゃうことになるんじゃないか、っていうくらい、神がかり的に素晴らしかった。……映画の感想でヲタク的な文はあまり書きたくないんだけど、敢えて言う。漫画『テニスの王子様』に登場する菊丸英二というキャラを、私は以前、「神様の贈り物のような子だ」と表現したことがあった。今回の映画『タッチ』での長澤さんにも、まさに同じような印象を受けたのだ。はっきり言って、特別演技力が優れた女優さんだとは思わない。確かに綺麗だし、プロポーションもよいけれど、容姿に優れたそんな女優さんは、ほかにもたくさんいる。『世界の中心で、愛をさけぶ』で長澤さんを観たときには、私の心にはたいしてヒットしなかったし、長澤さんが今後、どんな女優さんになっていくのかも、もちろんわからない。
それでも、この実写映画版『タッチ』に出演した長澤さんと、彼女が生み出した南ちゃんは、まさに「神様の贈り物」。……奇跡そのものの「浅倉南」。スクリーンに生きる宝石を、まのあたりにできた気分。
さて、犬童一心監督。この人が「青春世代の若者を扱うのが巧いみたいだ」とは、『ジョゼと虎と魚たち』を観たときに思った。『タッチ』でも、その技は存分に発揮されていたように感じる。長澤さんの南ちゃんについては前述した通りだし、斉藤兄弟が演じた上杉兄弟は、私にとっては、予想していたよりもずっとしっかり「たっちゃんとかっちゃん」だった。
ただ、『ジョゼと虎と魚たち』や『メゾン・ド・ヒミコ』を観たときほど、「うわっ! この監督にはいい意味でやられた!!」という実感が持てなかったのは、脚本が渡辺あやさんではなかったためなのだろうか、と後日に思い至った。別に、『タッチ』の脚本を書かれた山室さんが悪いという意味ではなく、私がノック・アウトされちゃうのは、犬童監督単体というよりは、「犬童一心と渡辺あや」というコンビが放つ力になのかな、と感じたような気がしないでもない、ってこと。
でも……、『タッチ』世代のあなた。中でも、オリジナルが盛り上がっていた当時に、「南ちゃんがどうも好きになれなかった」というあなた(実を言うと、私は昔「南ちゃん」が大嫌いだった)。……長澤まさみさんが演じる南ちゃんを試してみて。もしかしたら、「浅倉南」を見る目が、180度変わるかもしれないよ。
観た日:2005年11月4日@テアトル・ダイヤ
お気が向かれたら →
『タッチ』
2005年・日本・116分
監督:犬童一心
製作:本間英行
原作:あだち充
脚本:山室有紀子
撮影:蔦井孝洋
音楽:松谷卓
出演:長澤まさみ 斉藤祥太 斉藤慶太 RIKIYA
風吹ジュン 宅麻伸 平塚真介 小日向文世 他
上杉家の双子の兄弟である達也(斉藤祥太)と和也(斉藤慶太)は、隣の家に住む幼なじみの浅倉南(長澤まさみ)と、ずっと一緒に仲よく育ってきた。野球が大好きな三人の幼い頃からの夢は「甲子園」。高校生になると、和也は明星学園野球部のエースとして「南を甲子園へ連れていくため」に日々頑張り、南はその野球部のマネージャーをしていて、そして、達也は、一見特に目的もなさそうな日々を悠々と送っていた。達也は南が好きだった。また、和也も南が好きだった。三人はもう、単なる「幼なじみ」ではいられない年齢になっていたわけだが……。
私くらいの世代の者にとって、あだち充先生の『タッチ』と『みゆき』っていう作品は、好きとか嫌いとかいう以前に、ほぼ社会現象であり、一種の「歴史」のような存在だったんじゃないかと思う。高橋留美子先生の『うる星やつら』や『めぞん一刻』みたいにさ。「ストーリィは知っていてあたりまえ」っていう感じ。
「どうして今更『タッチ』を実写映画化しなきゃならないんだ?」と、正直、訝しく思った。観終えた今ですら思っている。結論を先に言うと、「長澤まさみのおかげ」で、この実写版『タッチ』はまあまあ成功だったと思う。ただ、なぜ「まあまあ」程度なのかというと、この映画を観ている最中の高揚や感動のほとんどは「原作やアニメの『タッチ』を知っているからこそ得られたもの」だったからだ。
ロング・シリーズだった『タッチ』を、急いたり尻すぼまりになったりすることもなく上手にまとめた映画ではあった。たった116分の作品であるのに、『タッチ』の名シーンの数々は上手に生かされているし、「よくぞこの台詞を使ってくれた!」と拍手したくなる部分も多々あったし、岩崎良美さんの例の曲『タッチ』を(カバー曲ではあったけど)挿入するタイミングなんて絶妙だったし。
だけど、こういう賞賛の感慨って、繰り返しになっちゃうけど、「私が原作やアニメで『タッチ』のストーリィを熟知しているからこそ味わえたもの」でしかないんだよね。逆にいえば、もともとの『タッチ』を知らないと、「ただのありふれた青春スポーツ恋愛モノじゃん」ってことにしかならないと思う。で、「ただの青春スポーツ恋愛モノ」としては、正直、インパクトも魅せかたも、ちょっと古くさいっていうか、目新しくないんだよ。当然だよね。だって、オリジナルは昔の作品なんだからさ。そもそも、「青春スポーツ恋愛モノ」の原型を作ったくらいの名作がオリジナルの『タッチ』だと思うんだけど、今現在、『タッチ』という物語にこの実写映画で初めて触れる人がいるとしたら、……『タッチ』の偉大な歴史を知らずとも、果たして感動できるものなのかどうか。私は「否」のような気がしちゃう。なんとなく。
とはいえ、ばっちり『タッチ』世代だった私は、この映画を観ながら散々感動しまくって、散々うるうるぼろぼろ泣いたさ。中でも、最も衝撃を受けたのは、長澤まさみさんの存在。っていうか、彼女が体現した「南ちゃん」の存在。なんかもう……、「かわいい」とか「純粋」とか「無垢」とか、そういう単純な言葉で表現すると、この女優さんと南ちゃんをかえって穢しちゃうことになるんじゃないか、っていうくらい、神がかり的に素晴らしかった。……映画の感想でヲタク的な文はあまり書きたくないんだけど、敢えて言う。漫画『テニスの王子様』に登場する菊丸英二というキャラを、私は以前、「神様の贈り物のような子だ」と表現したことがあった。今回の映画『タッチ』での長澤さんにも、まさに同じような印象を受けたのだ。はっきり言って、特別演技力が優れた女優さんだとは思わない。確かに綺麗だし、プロポーションもよいけれど、容姿に優れたそんな女優さんは、ほかにもたくさんいる。『世界の中心で、愛をさけぶ』で長澤さんを観たときには、私の心にはたいしてヒットしなかったし、長澤さんが今後、どんな女優さんになっていくのかも、もちろんわからない。
それでも、この実写映画版『タッチ』に出演した長澤さんと、彼女が生み出した南ちゃんは、まさに「神様の贈り物」。……奇跡そのものの「浅倉南」。スクリーンに生きる宝石を、まのあたりにできた気分。
さて、犬童一心監督。この人が「青春世代の若者を扱うのが巧いみたいだ」とは、『ジョゼと虎と魚たち』を観たときに思った。『タッチ』でも、その技は存分に発揮されていたように感じる。長澤さんの南ちゃんについては前述した通りだし、斉藤兄弟が演じた上杉兄弟は、私にとっては、予想していたよりもずっとしっかり「たっちゃんとかっちゃん」だった。
ただ、『ジョゼと虎と魚たち』や『メゾン・ド・ヒミコ』を観たときほど、「うわっ! この監督にはいい意味でやられた!!」という実感が持てなかったのは、脚本が渡辺あやさんではなかったためなのだろうか、と後日に思い至った。別に、『タッチ』の脚本を書かれた山室さんが悪いという意味ではなく、私がノック・アウトされちゃうのは、犬童監督単体というよりは、「犬童一心と渡辺あや」というコンビが放つ力になのかな、と感じたような気がしないでもない、ってこと。
でも……、『タッチ』世代のあなた。中でも、オリジナルが盛り上がっていた当時に、「南ちゃんがどうも好きになれなかった」というあなた(実を言うと、私は昔「南ちゃん」が大嫌いだった)。……長澤まさみさんが演じる南ちゃんを試してみて。もしかしたら、「浅倉南」を見る目が、180度変わるかもしれないよ。
観た日:2005年11月4日@テアトル・ダイヤ
お気が向かれたら →


