『蘭追い人、幻の貴婦人をさがす』を読んだよ。

►2008/12/16 09:26 

蘭追い人、幻の貴婦人をさがす (ヴィレッジブックス)

『蘭追い人、幻の貴婦人をさがす』
"DEADLY SLIPPER"

著:ミシェル・ワン(Michelle Wan)
訳:羽田詩津子
発行:ヴィレッジブックス

 フランスのドルドーニュ地方を舞台に、蘭研究者のジュリアン・ウッドと、インテリア・デザイナーのマーラ・ダンが素人探偵を務めるコージー・ミステリ・シリーズの第1弾。

 蘭の専門家で造園業も営んでいるジュリアン・ウッドのもとを、マーラ・ダンという女が訪ねてきた。「19年前に失踪した双子の姉を探す手助けをしてほしい」という彼女は、蘭の写った写真を手にしている。それは行方不明の姉が撮影したもので、その場所を特定できれば、姉のいどころをつきとめられるのではないか、とマーラは考えているのだった。写真に写っている蘭は、通称「貴婦人のスリッパ」と呼ばれる、非常に稀少な品種。幻の蘭を発見できるかもしれない、と考えたジュリアンは、マーラに協力するのだが……。

 ジュリアンはイギリス人で、マーラはカナダ出身。舞台となっているフランスの田園地方では、彼らは外国人なのである。

 作者のミシェル・ワンも蘭の愛好家ということで、蘭に関する描写は詳細で長い。園芸が好きな人には、興味深いテキストなのかもしれない。

 ただ、私は植物にまったく興味がないので、作中の大部分を占める蘭の説明を読むのが、かなり苦痛だった。「蘭にそそられないなら、読むなよ」と我ながら思う。

 私がこの本を手に取った理由は、「フランスのドルドーニュ地方の料理描写が多いらしい」と耳にしたからだった。料理が出てくる場面は確かにあったが、「多い」というほどではなかった。

 ミステリとしては、展開に中だるみが目立つ。登場人物は少なく、トリックはあってないようなもの。コージーだから、主軸がシンプルなのはマイナスではないけれど、本筋と関係のない描写(つまり、蘭の薀蓄)が多すぎて、また、探偵役たちの行動が遅く、状況描写に重複を多用しすぎている。テキストをもっとダイエットさせればよいのになぁ、と読みながら何度も感じた。

 とはいえ、1作目でシリーズ全体の魅力を判断することはできないし、「蘭の専門家」が主人公というのは、ミステリには珍しくておもしろい設定ではある。本国では続刊されているそうなので、人気シリーズとなっているようだ。

 たた、個人的に、ジュリアンとマーラにまったく共感できなかった。このふたり、私にとっては「できることなら、友達になりたくない相手」なのである。ふたりの言動は自己中心的に映ることが多くて、思いやりや協調性が、あまり感じられなかった。現実にいたら、自分は苦手に感じそうなふたりなのである。

 ジュリアンとマーラの恋がどう発展していくかも、このシリーズの今後の見どころとなっているらしい。彼らに好感を覚えて、その関係に興味をいだけていたとしたら、「次作も邦訳してほしいなぁ。引き続き、読んでいきたいな」と思うところなのだが、残念ながら、私には彼らの未来がまったく気にならないのだ。

テーマ : 推理小説・ミステリー - ジャンル : 本・雑誌

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