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2008年12月08日(月)

『容疑者たちの事情』を読んだよ。

容疑者たちの事情 (創元推理文庫)

『容疑者たちの事情』
"Snapped in Cornwall"

著:ジェイニー・ボライソー(Janie Bolitho)
訳:山田順子
発行:創元推理文庫

 イギリスのコーンウォール地方を舞台に、画家兼写真家の未亡人ローズ・トレヴェリアンが素人探偵を務めるシリーズの第1弾。

 コーンウォールに引っ越してきたゴージャスな女性ガブリエル・ミルトンの依頼を受けて、彼女のクリスマス・カード用写真を撮影したローズ・トレヴェリアン。その縁で、ローズはガブリエルの主催するホーム・パーティに招待される。しかし、パーティの最中に、ガブリエルは転落死を遂げた。彼女の夫のデニスや、ミルトン家で手伝いをしている女に頼られたローズは、いつのまにかこの事件を調査していて……。

 いわゆる「巻きこまれ型」のミステリ。捜査には素人のはずのローズが探偵役に順応するのがやたらと早くて、少々、無理があるように思えた。もちろん、この手の素人探偵シリーズにご都合主義はつきものなのだけれど、たいていの素人探偵は、ミステリ小説の愛読者だったり、テレビの刑事ドラマのファンだったりして、殺人事件の捜査に隠れた憧れやミーハーな知識を持っている。しかし、ローズはそういう素養がまったくない設定なのに、死体を目の前にした瞬間、「全員、邸内にとどまっているほうがいいと思います」と冷静に発言する。現場を乱したり勝手にその場を離れたりすると警察の捜査に支障があるから、という意味だけれど、もうちょっと動揺したほうがリアリティが出たのではないか。「主人公が初めて殺人事件に巻きこまれる、シリーズ第1作」なのだから。

 全体的に、そこはかとなく暗い小説である。ローズは夫を失ったことから立ち直れてなくて、また、彼女を取りまくキャラクターたちも、やたらと厭世的で、通じて機嫌が悪い。暗い内容が悪いといっているわけではなく、また、無意味に明るい物語よりは、暗さがつきまとうほうが現実味を感じられて私は好きなのだが、今作に限っては、この暗さに最後まで慣れることができなかった。それどころか、不快にすら感じた。これはあくまでも私の印象だが、キャラクターたちの描写に、作者の「侮蔑的な目」が顕著なように感じられたのである。もちろん、作者が登場人物に愛着をいだいていないわけがないとは思うし、きっと、客観的描写を徹底しようとした結果だろうとは想像がつくのだが、作者が「上から目線」でキャラクターを綴ったことにより、彼らの欠点ばかりがきわだって、魅力や人間味が伝わりにくくなっていたように感じた。

 ミステリとしてのトリックはあってないようなもので、「暗い内容なのに、落ちは単純」である。これだと、読了したときの印象が陳腐になってしまうのは当然だろう。とことん陽気で敢えてご都合主義を満載にしているコージーなら、トリックや落ちが単純でも構わないだろうが(逆に、明るいコージーのトリックや落ちが、こみいっていて深刻だったら、すこぶるバランスが悪く映る)、シリアスな設定とキャラクターを作ったのなら、そのバック・グラウンドを受けとめきれる重厚な起承転結を用意するべきである。

 散々けなしてしまったが、第1弾ですべてを判断すると損をしかねないのがシリーズ・ミステリというもの。現在、このシリーズは第4弾まで邦訳されているので、今後もローズとつきあい続けるかどうかは、せめて、あと数作読んでから決めようと思う。

テーマ : 推理小説・ミステリー - ジャンル : 本・雑誌

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