『桃のデザートには隠し味/お料理名人の事件簿1』を読んだよ。
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『桃のデザートには隠し味/お料理名人の事件簿1』
"A Peach of a Murder"
著:リヴィア・J・ウォッシュバーン(Livia J. Washburn)
訳:赤尾秀子
発行:ランダムハウス講談社
退職した教師フィリス・ニューサムが素人探偵を務めるミステリ・シリーズの第1弾。「コージーだろうなぁ」と思って読んでみたら、かなりドメスティック・テイストだったので、個人的には嬉しかった。
退職した歴史教師で未亡人のフィリスは、自分と同じ退職した教師を集めて、自宅に下宿させている。フィリスと下宿人のひとりキャロリンが、目下、夢中になっているのは、地元の「ピーチ・フェスティヴァル」で開催される「桃料理コンテスト」に出品するお菓子の試作。しかし、その桃を調達した果樹園のオーナーが不審な死を遂げた。そして、遂にやってきたコンテストの当日、ふたりめの死人が出て……。
ゆるーいミステリなんだろう、と思って読んでいた。のどかなのほほん系だろうな、と。でも、ページをめくっていったら、全然違った。
「退職した教師」という設定のフィリスたちは、当然ながら、老人である。体力や容姿の衰え、認知症、生死に関わる病気 ― そういった事柄が、彼女たちの身近な問題として綴られている。また、彼女たちには、伴侶に先立たれたり、友人の死を見届けてきたりという、「年齢を重ねた人間」ならではの重い過去が、厳然とある。
加えて、「教育現場の問題」の描写も多い。かつての教え子たちや、世代の違う現職の教師たちと関わることで、フィリスたちは退職していても、「自分は教師である」という視点を、いつも必ず、確乎として持っている。
そういった生々しいエピソードを脇に、本筋として綴られる殺人事件。……この結末と犯人、私には意外すぎた。コージーやドメスティックのトリックや犯人は、中盤辺りまで読むと、たいてい、「あ、こうなるんだろうな」と予想がついて、それがはずれることは、めったにないのだけれど、今作の結末は、予想とはまったく違っていただけでなく、胸が苦しくなるほど衝撃的で悲しかった。読み終えてから、しばらくのあいだ、体が硬直して、動けなかった。
はっきり言って、あと味のよい作品ではなない。今作の結末が提示した痛さとやりきれなさを、私は当分、忘れることができないだろう。ただ、その重みと容赦のなさが、推理小説好きとしては、とても嬉しかった。今後、このシリーズが、どんなカラーで展開していくのかは、わからない。コージー寄りになっていっても、私は読み続けるとは思うが、「第1作が備えていた重さと痛さを持ち続けてほしいな」と、勝手ながら願う。
テーマ : 推理小説・ミステリー - ジャンル : 本・雑誌











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