『キーライム・パイはため息をつく』を読んだよ。

►2008/11/03 19:19 

キーライム・パイはため息をつく (ヴィレッジブックス F フ 2-10)

『キーライム・パイはため息をつく』
"KEY LIME PIE MURDER"

著:ジョアン・フルーク(Joanne Fluke)
訳:上條ひろみ
発行:ヴィレッジブックス

 レイク・エデンでクッキー・ショップ「クッキー・ジャー」を経営しているハンナ・スウェンセンが、素人探偵を務めるコージー・ミステリの第9弾。今回は、地域のお菓子コンテストで審査員をしていた若い家庭科教師のウィラが殺される。審査員仲間でもあったハンナは、ウィラを殺した犯人をつきとめるため、いつものように家族や仲間の手を借りつつ、独自の調査を始めて……、という内容。

 シリーズを追うごとに、「ご都合主義度」が高くなっていくような気がする。コージーの売りは気軽さにあるといえども、「いくらなんでも、うまくいきすぎだろ」と言いたくなるシーンが多すぎ。

 でも、このシリーズは、それでいいのかなぁ、とも思う。ハンナ&ノーマン&マイクの、信じがたいほど平和なトライアングル・ラヴ(アメリカで重婚が許可されない限り、この恋愛関係の大団円はありえないんじゃないだろうか)。「性格も容姿も、世界一、抜群の人間だらけ」のようなハンナの家族や仲間たち。ほぼ人間化しているほどキャラクターの立っている猫。「いくらアメリカ人でも、こんなにいつでもテンション高くないでしょ?」と疑いたくなる、大げさな表現とリアクションの数々。ファンタジーでもないのに、限りなく非現実的なこれらの描写には、失笑を誘われることも、正直、多いのだけど、ハンナたちとのつきあいが長くなると、「慣れ」も手伝ってか、読んでいると安心感さえ覚えてしまう。

 お菓子やお料理のレシピが多数、記載されているのも、このシリーズの魅力。普段、私は甘い物に執着がないのだけれど、このシリーズに載っているレシピを参考に、ときどきお菓子を焼くことはある。「これぞアメリカン!」という繊細さに欠けたレシピが多いけれど、なかなか美味しいし、ハンナたちと一緒に、「レイク・エデンの『クッキー・ジャー』で仕事をしている気分」になれるのも、嬉しい。

 それにしても、今作に載っているレシピには、とんでもないものがあった。中でも、一番びっくりしたのは、「チョコバー・フライ」。スニッカーズやミルキーウェイといったチョコレート・バーに、アメリカン・ドッグのような衣をつけて揚げた、という1品。すごいカロリー。すごい発想。「さすがだよ、アメリカ人……」という皮肉な言葉しか出てこない。カロリー的に試す勇気はないけど……、ちょっと食べてみたくはある。

 あと、もう1品、「おいおい……」と思ったのが、「朝食用オムレツ」。「朝ごはんの支度を楽にするため、前夜、キャセロールに材料を投入してオーヴンで焼く準備をしておく」というレシピなんだけど、焼きあがるまでに1時間30分かかるので、「朝食を食べる2時間前に起床しろ」と書かれている。……朝ごはんを食べる2時間も前に起きなきゃならないこのレシピのどこが、「朝食の支度を楽にするため」っていうコンセプトにあてはまるんだ!? ああ、まったくもって、意味がわからない。美味しそうではあったけど。

 そんなこんなで、物語的にも、レシピ的にも、つっこみどころには、こと欠かない、このシリーズ。今作では明らかにならなかった、ハンナの母・ドロレスの「秘密の作業」がなんなのかも、簡単に予想がついちゃうけれど、……わかりきっていても、やっぱり、シリーズを読み続けずにはいられない。自分もすっかり、「レイク・エデンの住人」という気分になっちゃっているから。

 ところで、このシリーズに限らないけど、ヴィレッジブックスは、邦訳のペースが速くて嬉しい。前作の記憶が薄れないうちに次作が刊行されるのって、海外ミステリ・シリーズの邦訳では、なかなかないことだよね。

テーマ : 推理小説・ミステリー - ジャンル : 本・雑誌

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