『諸国空想料理店』を読んだよ。
『諸国空想料理店』
著:高山なおみ
発行:ちくま文庫
高山なおみさんの処女エッセイ『諸国空想料理店/KuuKuu』を文庫化したのが今作。もともとの本は、1995年の発行だった。
現在、料理家として有名な高山なおみさんは、以前、「KuuKuu」というレストランのシェフでもあった。高山さんがホームページで書いてらした日記『日々ごはん』(書籍化もしている。残念ながら、2008年2月末で終了となった)には、「KuuKuu」でかつて一緒に働いていたメンバーのかたがたに関するエピソードがよく出てくる。
「KuuKuu」が発行していたフリー・ペーパーに、シェフの高山さんがエッセイを書かれていた。それを出版社のかた(お店のお客さまだったそうだ)がご覧になったのがきっかけで、『諸国空想料理店』が書籍化したそうだ。
『日々ごはん』等で綴られている飾り気がなくて生々しい高山さんの文章には、独特の味わいと雰囲気がある。どなたが書かれたのか知らない文章をたまたま読んでいて、「高山さんの文体に似てるなぁ」と思ったら彼女が書かれたものだった、などということもあった。
『諸国空想料理店』を読んで驚いたのは、「現在の高山さんの文章と、全然違うなぁ」ということ。充分に読み応えがあって、料理好きとしても読書好きとしても楽しめた1冊だったのだけれど、装飾や劇的な表現が少し多いかな、という印象を受けた。それが悪いというわけではなくて、意外に感じたのである。現在の高山さんの文章の特徴は、前述したように、「飾り気がなくて生々しい」という点だと、私は思っているから。
だからこそ、「処女作」なんだよなぁ、と感じた。文章って、変わるのだ。どなたが書かれたのか知らずにこの本を読んでいたとしたら、「高山さんの文章だ」と当てることが、私にはできなかったかもしれない。「若くて熱い料理人の女性が書いたのだろうな」とほほ笑ましく感じただけにとどまったかもしれない。
高山さんご自身と、高山さんがお作りになるお料理の魅力は、『諸国空想料理店』でも、じっくり、たっぷり、味わえる。ただ、もしも、高山さんのご活躍をこれから書籍で知ろうと思われているかたがいらっしゃるなら、『日々ごはん』や各レシピ本で彼女の世界に触れてから、『諸国空想料理店』を手に取られると楽しいのではないかな、と思った。そのルートをたどった私が、現にとても楽しくて、感慨深い思いになれたから。
高山さんのサイト〔ふくう食堂〕は、もちろん公式なのだけれど、「オフィシャル・サイト」ではなくて「ホームページ」と呼びたくなる。どうしてそういう気持ちになるのか、高山さんのファンのかたになら、わかっていただけるのではないかと思う。
『日々ごはん』の連載が終わってしまって、とても淋しい。でも、「まとまった文章が書きたくなったから、とりあえず、日記を書くことをやめる」というようなことを、高山さんは書かれていたから、彼女がこれから見せてくださるだろう新たな文章世界を、ゆっくりと楽しみに待ちたい。料理家としてはもちろん、「いつまでも読み続けたい文章を書いてくれる人」としても、私は高山さんという人が大好きだ。
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