『潜水服は蝶の夢を見る』を観たよ。
「皮肉」が爽快。
『潜水服は蝶の夢を見る』
"LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON"
"THE DIVING BELL AND THE BUTTERFLY"
2007年・フランス&アメリカ・112分
監督:ジュリアン・シュナーベル
製作:キャスリーン・ケネディ ジョン・キリク
製作総指揮:ジム・レムリー ピエール・グルンステイン
原作:ジャン=ドミニク・ボビー
脚本:ドナルド・ハーウッド
撮影:ヤヌス・カミンスキー
編集:ジュリエット・ウェルフラン
音楽:ポール・カンテロン
出演:マチュー・アマルリック マリ=ジョゼ・クローズ エマニュエル・セニエ
オラツ・ロペス・ヘルメンディア アンヌ・コンシニ パトリック・シェネ 他
働き盛りで遊び盛りの42歳、あの有名ファッション誌『ELLE』の編集長、女も美食もお洒落に謳歌 ― 「ジャン=ドー」ことジャン=ドミニク・ボビー(マチュー・アマルリック)は、時代のそんな成功者だった。しかし、突然の脳梗塞で「ロックト・イン・シンドローム」となってしまう。「閉じ込め症候群」とも呼ばれるこの症状に襲われた彼は、全身の自由を失って、左の瞼しか動かせなくなったのだ。初めは絶望に沈んだジャン=ドーだったけれど、やがて、自伝を書こうと思い立つ。かくして、「左目の瞬きのみで言葉を伝える」ことによって、ジャンドーは自身を語り始めた。
実在の人物ジャン=ドミニク・ボビーの自伝がベースになっている作品。つまり、実話の映画化である。
映像や内容もさることながら、なにより、詩的ではあっても意味不明なタイトルが、初めて予告編を観たときからずっと頭にひっかかっていて、「この映画、観よう」という気持ちになった。もちろん、映画を観れば、この意味不明なタイトルに「どういう意味があるのか」ということが、きちんとわかる。
「お涙ちょうだいの物語にはしたくなかった」というようなことを、ジュリアン・シュナーベル監督がなにかのインタビューでおっしゃっていた。その思惑は見事に成功していて、この作品には、ユーモアと冷静な視点、そして、「皮肉」があふれている。特に、主人公ジャン=ドーの「心の声」が、なにかと的確にアイロニカルで、爽快ですらあるのだ。
「左目の瞼しか動かせなくなった、気の毒な男」の物語だというのに、この映画を観ていると、思わずくすっと笑ってしまったり、登場人物たちのスタイリッシュなファッションに憧れたり、揃いも揃って美人の女優さんたちに見惚れたり、粋で躍動感のあるカメラ・ワークに感嘆のため息をもらしたりできる。とにかくユーモラスで、とびきりお洒落なのだ。
しかし、「非・お涙ちょうだい」だからといって、感動できないというわけではない。それどころか、とても胸に響く。まっすぐに考えさせられる。感動を煽る過剰な演出がないからこそ、この映画が描いている人物と事実にじっくりと落ち着いて向き合えるとも言えるように思えた。
ジャン=ドーと、彼を取り巻く人々の交流が、語弊を承知で言うが「魅力的」である。特に、ジャンドーが自伝を書こうと思いついてから、彼の言葉を書き留めるために出版社から派遣されてくるある女性がいるのだけれど、彼女とジャン=ドーの紡ぎ出す「情景」が、私にはすこぶる優しい風景に見えた。熱かったり激しかったりする感情がそこに見えるわけではなく、また、見える必要もまったくないのだが、それでも、いや、だからこそ、「いい関係だなぁ」としみじみとして、思わず口もとがほころんでしまう。そんな心地よい情景をふたりはかもし出していた。羨ましいと素直に思える距離感でもあった。
ラストの余韻はせつないが、味わい深くもある。ジャン=ドー本人による原作を、ぜひ読んでみたくなった。
ところで、撮影のヤヌス・カミンスキーは、ハリウッドのベテランのようで、『ミュンヘン』や『マイノリティ・リポート』、『プライベート・ライアン』、『シンドラーのリスト』などなど、あらゆる有名作の撮影を担当しているらしい。公開を控えている最新作は、あの『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』。そんなカミンスキーの奥さまは、女優のホリー・ハンター。……そうなんだぁ、全然知らなかったわ。
観た日:2008年2月10日(日)@シネカノン有楽町2丁目
お気が向かれたら →
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↓参考↓
潜水服は蝶の夢を見る@映画生活
「潜水服は蝶の夢を見る」の映画詳細、映画館情報はこちら >>
↓観た作品&関連商品↓
![キネマ旬報 2008年 2/1号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51ACWTn3jfL._SL160_.jpg)

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