2005年09月11日(日)
『メゾン・ド・ヒミコ』を観たよ。
決めた。『タッチ』を観に行くわ、私。
『メゾン・ド・ヒミコ』
参考:メゾン・ド・ヒミコ@映画生活 メゾン・ド・ヒミコ-シネマトゥデイ
2005年・日本・131分
監督:犬童一心
プロデューサー:久保田修 小川真司
脚本:渡辺あや
音楽:細野晴臣
出演:柴咲コウ オダギリジョー 田中泯 歌澤寅右衛門
西島秀俊 青山吉良 他
私にとっての2005年に観た映画のナンバー・ワンは『ヒノキオ』だったんだけど、トップは『メゾン・ド・ヒミコ』に変わった。今、「一番好きな監督は?」と問われたら、即答で「犬童一心さん!」って答えるよ。
沙織(柴咲コウ)は小さな塗装会社で事務員として働く、お世辞にも愛想がよいとは言えない女性。そんな彼女のもとに、岸本(オダギリジョー)と名乗る男が訪ねてくる。彼は言った。沙織の父親・照雄(田中泯)が末期癌で余命わずかだ、と。照雄は「卑弥呼」という源氏名で銀座のゲイ・バーを有名にした男で、ママを引退したあとは、海辺でゲイのための老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」を運営していた。照雄自身もゲイで、岸本は彼の恋人である。自分と母を捨てた照雄を沙織は恨んでいた。だが、「老人ホームの手伝いとして働けば、報酬を払う」という岸本の言葉に、沙織は「メゾン・ド・ヒミコ」を訪れることになって……。
『ジョゼと虎と魚たち』を創った、犬童監督と脚本家・渡辺あやさんのコンビ。ほかにも、『ジョゼ〜』に携わったスタッフで『メゾン・ド・ヒミコ』にも関わっている人たちは多い。ジョゼや今回の沙織のように、……「愛されることに不器用な女」を描くことが、このスタッフたちは、どうしてこんなにも巧みなのだろう。
『ジョゼ〜』も『メゾン・ド・ヒミコ』も、胸に響きまくった愛しい作品ではあるのだが、「もう一度観たい!」とは、実はまったく思っていない。あまりにも痛すぎるから、これらの物語と再度触れる勇気が、私にはないのである。他人のぶしつけな手のひらで心臓をわしづかみにされるような、容赦のない痛み。そんな痛みが、特に『メゾン・ド・ヒミコ』には、各所にトラップのごとく待ち受けている。誤解がないように言っておくが、ラストのあと味は、すこぶるよいのだ。エンド・ロールを迎えるときの余韻は、すがすがしくて爽やか極まりない。ただ、その爽快感へたどりつくまでの過程に耐えることが、……私にはちょっと、繰り返せそうにないのである。
同性愛者というマイノリティーの描きかたは、とても直球である。実際に受けることの多い差別や、巷にありふれた心ない嘲笑に、この映画に登場したゲイたちもさらされていた。もっと深い事実や状況までつっこんで描いてくれてもよかったんじゃないかな、と些か不満に思ったのだが、……ありがちな直球でもこんなに痛くて切ない作品に仕上がっているのだから、これ以上リアリティを追及されたら、痛みが計り知れなくなってしまうに違いない。それなら、直球がもたらす現実性でとりあえず充分だ、と考えを改めた。
オダギリジョーさんの立ち居振る舞いと雰囲気が、まるでお伽の世界の住人のごとく完璧に美しい。しかし、彼演じる岸本が絞り出す「特定の人を愛しているがゆえに生まれる弱さと恐怖」は、ゲイとかストレートとかに関係なく、きっと誰もが背中合わせになってしまう、醜くも避けがたい落とし穴であったから、共感しやすいゆえに、……哀しくてたまらなかった。
田中泯さんの、いや、彼が演じる卑弥呼ママのカリスマ性に、説得力がありすぎる。なぜ彼が岸本と交際するようになったのか、その理由や経緯は特に説明されていないのに、岸本が卑弥呼に魅了されて囚われたのは当然だ、と卑弥呼の超越したカリスマ性が納得させてくれる。
美を体現する岸本や卑弥呼とは対照的に、柴咲コウさん演じる沙織の「イケてなさ」が強烈。この作品での柴咲さんは多分、ほとんど「すっぴん」だ。そんな「すっぴん」で柴咲さんが表現した沙織という女性は、少々太めで、めったに笑わなくて、ファッション・センスもなくて、「垢抜けていない」を地でいっている女である。つまり、柴咲さん本人の印象とは正反対の女性だ。岸本や卑弥呼が静やかにも華やかすぎるからこそ、沙織のぱっとしてなさがより惨めに映る。しかし、これもやはり、この映画の狙ったポイントなのであろうと思う。沙織が笑うとき、沙織が色っぽく麗しく見えるとき、……そんな一瞬が、この作品の計算された見せ場になっているのだな、と感心せずにはいられなかったから。
もう一度観る勇気はないのに、私には大切で宝物に等しい作品である。予告を観たときから期待していた『メゾン・ド・ヒミコ』。本編に接して、期待はまったく裏切られなかった。そう、裏切られなかったのだけれど、……「また観よう」と思える勇気、いつか自分に培うことができるよう、強靭に生きていきたい、……今はそう願う。頑張る。
観た日:2005年9月9日@シネマライズ

観た作品&関連商品
『メゾン・ド・ヒミコ』
参考:メゾン・ド・ヒミコ@映画生活 メゾン・ド・ヒミコ-シネマトゥデイ
2005年・日本・131分
監督:犬童一心
プロデューサー:久保田修 小川真司
脚本:渡辺あや
音楽:細野晴臣
出演:柴咲コウ オダギリジョー 田中泯 歌澤寅右衛門
西島秀俊 青山吉良 他
私にとっての2005年に観た映画のナンバー・ワンは『ヒノキオ』だったんだけど、トップは『メゾン・ド・ヒミコ』に変わった。今、「一番好きな監督は?」と問われたら、即答で「犬童一心さん!」って答えるよ。
沙織(柴咲コウ)は小さな塗装会社で事務員として働く、お世辞にも愛想がよいとは言えない女性。そんな彼女のもとに、岸本(オダギリジョー)と名乗る男が訪ねてくる。彼は言った。沙織の父親・照雄(田中泯)が末期癌で余命わずかだ、と。照雄は「卑弥呼」という源氏名で銀座のゲイ・バーを有名にした男で、ママを引退したあとは、海辺でゲイのための老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」を運営していた。照雄自身もゲイで、岸本は彼の恋人である。自分と母を捨てた照雄を沙織は恨んでいた。だが、「老人ホームの手伝いとして働けば、報酬を払う」という岸本の言葉に、沙織は「メゾン・ド・ヒミコ」を訪れることになって……。
『ジョゼと虎と魚たち』を創った、犬童監督と脚本家・渡辺あやさんのコンビ。ほかにも、『ジョゼ〜』に携わったスタッフで『メゾン・ド・ヒミコ』にも関わっている人たちは多い。ジョゼや今回の沙織のように、……「愛されることに不器用な女」を描くことが、このスタッフたちは、どうしてこんなにも巧みなのだろう。
『ジョゼ〜』も『メゾン・ド・ヒミコ』も、胸に響きまくった愛しい作品ではあるのだが、「もう一度観たい!」とは、実はまったく思っていない。あまりにも痛すぎるから、これらの物語と再度触れる勇気が、私にはないのである。他人のぶしつけな手のひらで心臓をわしづかみにされるような、容赦のない痛み。そんな痛みが、特に『メゾン・ド・ヒミコ』には、各所にトラップのごとく待ち受けている。誤解がないように言っておくが、ラストのあと味は、すこぶるよいのだ。エンド・ロールを迎えるときの余韻は、すがすがしくて爽やか極まりない。ただ、その爽快感へたどりつくまでの過程に耐えることが、……私にはちょっと、繰り返せそうにないのである。
同性愛者というマイノリティーの描きかたは、とても直球である。実際に受けることの多い差別や、巷にありふれた心ない嘲笑に、この映画に登場したゲイたちもさらされていた。もっと深い事実や状況までつっこんで描いてくれてもよかったんじゃないかな、と些か不満に思ったのだが、……ありがちな直球でもこんなに痛くて切ない作品に仕上がっているのだから、これ以上リアリティを追及されたら、痛みが計り知れなくなってしまうに違いない。それなら、直球がもたらす現実性でとりあえず充分だ、と考えを改めた。
オダギリジョーさんの立ち居振る舞いと雰囲気が、まるでお伽の世界の住人のごとく完璧に美しい。しかし、彼演じる岸本が絞り出す「特定の人を愛しているがゆえに生まれる弱さと恐怖」は、ゲイとかストレートとかに関係なく、きっと誰もが背中合わせになってしまう、醜くも避けがたい落とし穴であったから、共感しやすいゆえに、……哀しくてたまらなかった。
田中泯さんの、いや、彼が演じる卑弥呼ママのカリスマ性に、説得力がありすぎる。なぜ彼が岸本と交際するようになったのか、その理由や経緯は特に説明されていないのに、岸本が卑弥呼に魅了されて囚われたのは当然だ、と卑弥呼の超越したカリスマ性が納得させてくれる。
美を体現する岸本や卑弥呼とは対照的に、柴咲コウさん演じる沙織の「イケてなさ」が強烈。この作品での柴咲さんは多分、ほとんど「すっぴん」だ。そんな「すっぴん」で柴咲さんが表現した沙織という女性は、少々太めで、めったに笑わなくて、ファッション・センスもなくて、「垢抜けていない」を地でいっている女である。つまり、柴咲さん本人の印象とは正反対の女性だ。岸本や卑弥呼が静やかにも華やかすぎるからこそ、沙織のぱっとしてなさがより惨めに映る。しかし、これもやはり、この映画の狙ったポイントなのであろうと思う。沙織が笑うとき、沙織が色っぽく麗しく見えるとき、……そんな一瞬が、この作品の計算された見せ場になっているのだな、と感心せずにはいられなかったから。
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観た日:2005年9月9日@シネマライズ

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メゾン・ド・ヒミコ 犬童一心 ★★★☆☆ しっとりとした家族の物語。ゲイの人たちが集まる老人ホームが舞台ということでキワモノの匂いも見る前はあったり、そんな所が引っ掛かりとして見に行ったのだが、実にどっしりとした重量感ある人間ドラマが展開されるもんで、見.
2005/09/13(火) 01:22:00 | 微動電信
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