ごはんの支度をしながら、気の合う映画を想うのが好き。字書き屋・香ん乃がお贈りする、インフォメーション・シネマ感想文・雑記など。 
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2006/09/11 23:35    あれから5年。
 なにも言及せずに日付を越えてしまうことに、なんとなく抵抗があって……、映画『ユナイテッド93』を観た際の感想文を、「9月11日・8時45分」の保存時間にして、この記事よりひとつ前のエントリーに置いてみた。

 難しいことは、やっぱり、なにもわからない、私には。テロ・戦争・殺人・飢餓、そういう諸々を一緒くたにして考えちゃいけないんだろうな、っていうことも、頭では承知。

 ただ、連日趣味を楽しんだり、能天気に萌え話をしたり、食べ物に困らないで「美味しい」だの「まずい」だのと言えたり ― そういうことができるのは、あたりまえのように命のある自分が、あたりまえのように平和の恩恵に浴しているから。この「あたりまえ」がどれだけ稀有で重いのか、いつなんどき突然「あたりまえ」ではなくなってしまうかもしれないのか、そういったことを、たとえば長崎と広島に原爆が落とされた日に、たとえば8月の終戦記念日に、たとえば September 11 である今日に、たとえば普段のなんでもない平日に、ちょっとでも頭の中でめぐらせてみる。そういうふうにするのって、少なくとも自分にとっては、……ずいぶん必要なこと。

 5年前の今日、当時ワールド・トレード・センターに勤務していた義姉と連絡がつかなくて、テレビのニュースを見つめながら、ただ硬直して電話を待っていたあいだの気持ち、明確に憶えている(義姉は無事だった)。その数年後、グラウンド・ゼロを訪れたときの表現しようのない気持ちもまた、鮮明な記憶。

 あの日から、今日で5年。
2006/09/11 08:45    『ユナイテッド93』を観たよ。
 9.11の是非を問うとか、あの日の意味について論じるとか、そういうことは、とりあえず考えなくてよい。「観て、知って、感じる」 ― この映画を観て、それができればいいんじゃないかな、って……、ただ、そう思った。

『ユナイテッド93』
原題:"UNITED 93"
参考:ユナイテッド93@映画生活 ユナイテッド93-シネマトゥデイ
2006年・アメリカ・111分
監督・脚本:ポール・グリーングラス
製作:ティム・ビーヴァン エリック・フェルナー 他
製作総指揮:ライザ・チェイシン デブラ・ヘイワード
撮影:バリー・アクロイド
編集:クレア・ダグラス クリストファー・ラウズ 他
音楽:ジョン・パウエル
出演:ハリド・アブダラ ポリー・アダムス オパル・アラディン 他

 2001年9月11日 ― 同時多発テロが起こったあの日、アメリカ国内を飛ぶ4機の飛行機がハイ・ジャックされた。1機は国防総省ペンタゴンに、2機はワールド・トレード・センターに、それぞれ激突した。では、テロリストが標的とした場所にたどり着くことなく墜落した4機目 ― ユナイテッド93の機内では、いったい、なにが起こっていたのか……?

 9.11を扱った映画を観たのは、『11'09''01/セプテンバー11』に続いて、『ユナイテッド93』で2本目。『ワールド・トレード・センター』も一応観るつもりではあるけれど、あまり期待はしていない。予告を観た限り、「アメリカ万歳」の映画になっているように見受けられたから。

 9.11はおそらく、世界で最も有名なテロ事件である。しかし、あのテロを扱った映画の『ユナイテッド93』に、悪人は登場しない。……ほっとした。「アメリカ万歳」の映画になっていなかったから。

 ハイ・ジャックされた機内の様子と、管制塔の様子、この2種類の映像だけで成り立っている。ドラマというよりはドキュメンタリー・タッチの映画。誰もが知っているたぐいの有名な顔の俳優は特に出演しておらず、管制官や軍関係者の人たちの一部は9.11時に対応していた本人だという。こういった要素のため、ただでさえドキュメンタリー的な作品の臨場感が更に増している。

 エンド・ロールが終わったあと、しばらく席を立てなかった。とはいえ、泣くには泣いたけれど、アイ・ラインが流れるほどではなかった。感動で胸がいっぱいになったとか、あまりの衝撃に体が動かなくなったとか、そういった激しい現象に陥ったわけでもなかった。

 ただ、席を立てなかった。今にして思えば、放心状態に近かったのかもしれない。

 この試写が終わって帰宅してから、思い出したことがあった。是枝裕和監督の『誰も知らない』という映画を観たときのことを、だ。『ユナイテッド93』とは、ジャンルも内容もまったく異なる作品だけれど、『誰も知らない』を観たとき、私はこう思ったのだった。

>「なにかを強く感じる」ということができれば、
>この映画を観た意味があるといえるのではないか、
>私はそう思う。この作品を観て、「ふーん」で
>終わってしまわない限りは、どんな感慨でも有益だ、と。

 この感慨とほとんど同じような気持ちを、『ユナイテッド93』に対してもいだいた。9.11の是非や意味を考えるのは難しいことだけれど、そこまでできなくても、こういった映画を観て、こういった事実があったのだと知って、こういったことに対して「なにかを感じ」られるのなら、とりあえずそれで充分なのじゃないかな、と。

 氾濫していたり、気安く多用されたりしている、"I love you."という言葉。この言葉が持つ本来の重さを思い出した。機内からのあの電話を受けた人たちのことを思ったら、……それ以上、なにも考えられなくなってしまった。

 この映画が、どの程度脚色されているのかはわからない。あの機体が最期を迎えた瞬間の内部の状況なんて、もっとわからない。ただ、それでも、心の底から思わずにはいられなかった。

「あとちょっとだったのに……」と。

試写日:2006年8月4日(金)@スペースFS汐留

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〔2006年9月10日(日)のお昼ごはん〕
★フィジッリを栗のクリーム・ソースで
★ゴーヤのごまだれ和え


 ホワイト・シチューのルーを会社でもらったのだけれど、残暑厳しい今、シチューを作る気分にはなれなかったから、ショート・パスタのソースにしてみた。

 みじん切りにしたベーコンをフライパンでじっくり加熱して脂を出したら、たまねぎの薄切りと冷凍の剥き栗(これも会社でもらったもの。冷凍の栗が売られているなんて、知らなかった)を炒めて、たまねぎがしんなりしたら、水(シチューの半量くらい)+日本酒を加えて、灰汁を取りながらしばらく煮込む。そのあと、シチューのルーを溶かし入れてもうちょっと煮込んで、頃合いを見て牛乳を加えたら更にもうちょっとだけ煮込んで、終わり。シチューよりはどろっと固めに仕上がったこれを、茹でたフィジッリにかけて、ソースに。栗の甘みが利いていて、なかなか美味しかった。冷凍の栗があるなんてなぁ……。本当、知らなかったわ……。生の栗を剥くのって、前日から水に浸けたりしなくちゃならなくて、結構骨だもんね。こういう冷凍品があるなら、栗ごはんの栗だってこれで充分なのかもしれないわね。

 ごまだれを作る。白練りごま+京風だし+みりん+七味唐辛子で。でもって、ゴーヤを薄切りにして軽く塩で揉んで水で洗ってからさっと茹でて、「茹であげ直後の温かいまま」先のごまだれで合える。練りごま+京風だし、って最高で最強の組み合わせのひとつ。こんなに簡単なのに、ものすごくしみじみと美味しいのですよ。


〔2006年9月10日(日)の夜ごはん〕
★栗のクリーム・ソース(お昼の残り)をかけた玄米&黒米のごはん
★ゴーヤのごまだれ和え(お昼の残り)に茹でもやしを加えて和えたもの
★めだま焼き


 あ……。この日、めかぶと納豆を食べるのを忘れてしまったわ。

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 深く考えないようにしよう。辻褄合わせたいと思ったら、混乱するし、納得いかないし、いろいろ文句つけたくなっちゃうからね。

『イルマーレ』(2006年度版)
原題:"THE LAKE HOUSE"
参考:イルマーレ@映画生活 イルマーレ-シネマトゥデイ
2006年・アメリカ・98分
監督:アレハンドロ・アグレスティ
製作:ロイ・リー ダグ・デイヴィソン
製作総指揮:メアリー・マクラグレン デイナ・ゴールドバーグ 他
脚本:デヴィッド・オーバーン
撮影:アラー・キヴィロ
編集:アレハンドロ・ブロデルソン リンジー・クリングマン
音楽:レイチェル・ポートマン
出演:キアヌ・リーヴス サンドラ・ブロック
   ディラン・ウォルシュ クリストファー・プラマー
   ショーレ・アグダシュルー エボン・モス=バクラック 他

 湖畔に建つガラス張りの家に住んでいた医者のケイト(サンドラ・ブロック)は、引っ越すことになった。遠く離れた別の病院に着任するからだ。自分の次にこの家に暮らすであろう住人へ宛てて、ケイトはポストに手紙を忍ばせた。郵便物の転送を頼みたい旨を伝えるために。一方、湖畔に建つガラス張りの家を買ったアレックス(キアヌ・リーヴス)は、ポストで不思議な手紙を見つける。ケイトという女が郵便物の転送について書いている内容だったのだが、アレックスの知る限り、この家はしばらく空き家だったはずなのだ。奇妙に感じながらも、アレックスはケイトに宛てて返事の手紙を送る。実は、ふたりのあいだには時間の隔たりがあった。ケイトは2006年を、アレックスは2004年を、「同時に」生きているのである。手紙のやり取りを続けるにつれて、強く惹かれあっていくふたり。しかし、存在する時代が違うため、会うことは叶わなくて……。

 同名韓国映画のリメイクとのこと。オリジナルは未見。

「違う時代を生きる男女のラヴ・ファンタジー」という設定は、たいして珍しくないと思うのだが、ふたりの時代のずれがわずか「2年」という微妙な年数であるのは、結構目新しいと思う。難解な物語ではない。ただ、展開や結果について「それをやったら、過去(or未来)を変えたことになるわけでしょう? 辻褄、合わなくならない?」といちいち考え出すと、次から次へと疑問が湧いてきてしまう。なので、こういった「時空いじり系ファンタジー映画」に対して「辻褄を合わせること」を望むのはナンセンスなのだけれど、……それを百も承知でも辻褄を合わせたくなってしまうのが、私の往生際が悪いところだ。もちろん、どれだけ考えようが、疑問がすっきりと整理されることはない。映画ファンを長年やっているわけだから、こういうストーリィの作品と自分の相性があまりよくないことも、最初からわかっていたのだ。なので、まあ……、手ごたえが芳しくなくても、不平不満は言えないよなぁ、とは思うんだけども。

 ラヴ・ストーリィとしての余韻は悪くない。ただ、主人公ふたりの行動によって、「哀れな立場」になってしまう人が結果的にいる。でも、そのかわいそうな人についての最終的な言及はないわけで。もちろん、「誰もが幸せになれる恋愛」なんていうものはなくてあたりまえなのだけれども、「あんたたち、ちょっと自分たちのことばっかり考えすぎなんじゃないの?」と主人公ふたりに私は言いたくなってしまった。

 でも、それでもよいのかな。恋をしている人間がわがままだったり自己中心的だったりするのは当然だし、また、それを貫いてこその恋愛だ、とも言えるんだものね。

「『スピード』の黄金コンビによるラヴ・ストーリィ」となにかと宣伝されているけれど、キアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックって、今でも『スピード』が肩書きについてくるんだね……。

 ところで、私はキアヌ・リーヴスのファンではないのだけれど、恋愛映画に出演している彼を観ると、しみじみ感心して唸ってしまう場合が多いのだ。『スウィート・ノベンバー』しかり。『恋愛適齢期』しかり。そして、今回の『イルマーレ』でもそうだった。

「恋をする男」を演じているときのキアヌって、「あなたしか見えない。あなただけを、心から、とこしえに、……愛してる」っていう真摯でひたむきな表情を、とてもリアリティに満ちた様子で見せてくれるのだ。特に、その眼差しに説得力があるの。「こんなに二枚目なのに、女なんて選り取りみどりにできそうなのに、『たったひとりの運命の相手』を懸命に愛している顔」を、キアヌはする。だから、恋愛映画に出演している場合に限って、私はキアヌ・リーヴスがとても好きだ。「たったひとりの誰かに、真実で永遠の愛を誓う姿」を、鮮烈に、美しく、なにより「現実的に」、教えてくれるから。

試写日:2006年9月7日(木)@ヤマハホール

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