ごはんの支度をしながら、気の合う映画を想うのが好き。字書き屋・香ん乃がお贈りする、インフォメーション・シネマ感想文・雑記など。
2006/08/31 03:21 『ユビサキから世界を』を観たよ。
で? あの娘たちの結論はなんだったわけ?
『ユビサキから世界を』
参考:ユビサキから世界を@映画生活 ユビサキから世界を-シネマトゥデイ
2006年・日本・63分
監督・脚本:行定勲
プロデューサー:古賀俊輔 深尾宏之
エグゼクティブ・プロデューサー:後藤由多加
撮影:中山光一
編集:今井剛
音楽:めいなCo.
主題歌:アンダーグラフ『ユビサキから世界を』
出演:谷村美月 北乃きい 麻里也
永岡真実 上原香代子 他
リンネ(谷村美月)、ウタ(北乃きい)、ラン(麻里也)、タマ(永岡真実) ― 同じ高校に通う仲良しの彼女たちは、ある日、ふと、集団自殺をすることに決める。表立った理由は特にない。現代社会がろくなものではないから、というだけだ。その日の午後10時に、命を絶つべく彼女たちは学校に集合するが……。
アンダーグラフの『ユビサキから世界を』という曲に感銘を受けた行定勲さんが撮った、63分の短い青春映画。行定さんは現代日本を代表する映画監督のひとりだろうと思う。今更ここでこの人について説明する必要も、この人がメガホンを執った映画の作品名を羅列する必要も、まったくないだろう。
……そんな有名監督さんの作品をけなすのは、少々抵抗があるのだけれども。
一見、無気力で、能天気で、ごく普通の少女たち。しかし、彼女たちは漠然とした不安や友達にも言えない悩みを各々が抱えている。それは自然で、当然のこと。加えて、「これといった大問題があるわけじゃないけど、このまま生き続けてたってなんの意味もないような気がする。だったら、別に死んじゃったっていいじゃん?」と、温度ぬるめに諦観するのも、まったく不思議ではないこと。多くの人の頭に一度や二度はよぎっているはずの、ありがちな負の感慨だろうと思う。私だって、何度そういうことを考えたか。10代の頃なんて、特に。
だから、「重すぎる問題に直面しているわけでもない普通の女の子たちが自殺を考える」というテーマそのものには、素直に共感できるし、突飛だとも思わないし、好感すら持てた。ただ、この作品のメイン登場人物の少女たちには、感情移入が全然できなかったのだ。
だって、「生々しさがない」から。
彼女たちが台詞で使う言葉、表情の機微、些細な仕草、眼差しの使いかた、それらすべてが嘘っぽいのだ。「フレッシュな女優さんばかりで、演技がこなれていないため」というわけでは、おそらくない。語弊を承知で言うが、極端なまでに「男の目線」で演出されているからだろうと思う。少女たちは可愛い。少女たちは色っぽい。少女たちはミステリアス。しかし、それだけ。この作品で動く少女たちからは、「現実」が匂ってこない。
私が過去に観た行定監督作品は、『GO』と『世界の中心で、愛をさけぶ』のみ。たったの2本。だから、なんの判断もできないし、えらそうなことを言う資格がないのも承知だ。しかし、どうしても拭いきれない共通の印象がある。『GO』を観たとき、私は心底感動した。だが、柴咲コウさんが演じたヒロインの描写とポジションに違和感を覚えて納得がいかなかった。『世界の中心で、愛をさけぶ』を観たとき、私は心底呆れた。「なんて完成度の低い、せっかくの女優を生かしきれていない恋愛映画なのだろう」と、怒りさえいだいた。『GO』でも、『世界の中心〜』でも、そして、今作『ユビサキから〜』でも、私が共通して感じた疑問は、「この監督はリアリティのある女(特に若い女の子)を描くのが、不得手なのではなかろうか?」というものだ。行定監督の作品に登場していたヒロインたちを目にして私が連想したのは、「少年漫画や青年漫画に登場しがちの、プロポーションが抜群で気が強くて実は健気な、男受けするステレオ・タイプのヒロイン」である。
その手の女性像が悪いと言っているわけではない。誰にだって理想はあるのだから。ただ、そういったヒロインからリアリティを感じ取ったり、そういったヒロインにシンクロしたりするためには、+αが必要なように私には思えてしまうだけだ。
「本物っぽさ」がなくて、男の人がとても好きそうな女の子たちが、なんとなく悩んで、なんとなく騒ぎを起こして、結局たいした結論も提示しないまま、なんとなく前向きになる。……今作『ユビサキから世界を』は、私にとって、それだけのイメージ映像である。「映画」には見えなかった。また、さまざまな要素がぼんやりと表現されているのだが、「抽象的」という綺麗なおべべを着せることで、「空疎」と「説明不足」の目くらましをしているのではないか、と皮肉に考えてしまった。
メインを務めた若い女優さんたちに魅力がないわけでは、決してない。ところで、リンネを演じた谷村美月さんは、「海賊版撲滅キャンペーン」で黒い涙を流しているあの少女だそうだ。印象の意味合いはともかく、映画ファンにとっては身近なお顔と言えるだろう。
上映会日:2006年8月30日(水)@イマジン・スタジオ

観た作品&関連商品
『ユビサキから世界を』
参考:ユビサキから世界を@映画生活 ユビサキから世界を-シネマトゥデイ
2006年・日本・63分
監督・脚本:行定勲
プロデューサー:古賀俊輔 深尾宏之
エグゼクティブ・プロデューサー:後藤由多加
撮影:中山光一
編集:今井剛
音楽:めいなCo.
主題歌:アンダーグラフ『ユビサキから世界を』
出演:谷村美月 北乃きい 麻里也
永岡真実 上原香代子 他
リンネ(谷村美月)、ウタ(北乃きい)、ラン(麻里也)、タマ(永岡真実) ― 同じ高校に通う仲良しの彼女たちは、ある日、ふと、集団自殺をすることに決める。表立った理由は特にない。現代社会がろくなものではないから、というだけだ。その日の午後10時に、命を絶つべく彼女たちは学校に集合するが……。
アンダーグラフの『ユビサキから世界を』という曲に感銘を受けた行定勲さんが撮った、63分の短い青春映画。行定さんは現代日本を代表する映画監督のひとりだろうと思う。今更ここでこの人について説明する必要も、この人がメガホンを執った映画の作品名を羅列する必要も、まったくないだろう。
……そんな有名監督さんの作品をけなすのは、少々抵抗があるのだけれども。
一見、無気力で、能天気で、ごく普通の少女たち。しかし、彼女たちは漠然とした不安や友達にも言えない悩みを各々が抱えている。それは自然で、当然のこと。加えて、「これといった大問題があるわけじゃないけど、このまま生き続けてたってなんの意味もないような気がする。だったら、別に死んじゃったっていいじゃん?」と、温度ぬるめに諦観するのも、まったく不思議ではないこと。多くの人の頭に一度や二度はよぎっているはずの、ありがちな負の感慨だろうと思う。私だって、何度そういうことを考えたか。10代の頃なんて、特に。
だから、「重すぎる問題に直面しているわけでもない普通の女の子たちが自殺を考える」というテーマそのものには、素直に共感できるし、突飛だとも思わないし、好感すら持てた。ただ、この作品のメイン登場人物の少女たちには、感情移入が全然できなかったのだ。
だって、「生々しさがない」から。
彼女たちが台詞で使う言葉、表情の機微、些細な仕草、眼差しの使いかた、それらすべてが嘘っぽいのだ。「フレッシュな女優さんばかりで、演技がこなれていないため」というわけでは、おそらくない。語弊を承知で言うが、極端なまでに「男の目線」で演出されているからだろうと思う。少女たちは可愛い。少女たちは色っぽい。少女たちはミステリアス。しかし、それだけ。この作品で動く少女たちからは、「現実」が匂ってこない。
私が過去に観た行定監督作品は、『GO』と『世界の中心で、愛をさけぶ』のみ。たったの2本。だから、なんの判断もできないし、えらそうなことを言う資格がないのも承知だ。しかし、どうしても拭いきれない共通の印象がある。『GO』を観たとき、私は心底感動した。だが、柴咲コウさんが演じたヒロインの描写とポジションに違和感を覚えて納得がいかなかった。『世界の中心で、愛をさけぶ』を観たとき、私は心底呆れた。「なんて完成度の低い、せっかくの女優を生かしきれていない恋愛映画なのだろう」と、怒りさえいだいた。『GO』でも、『世界の中心〜』でも、そして、今作『ユビサキから〜』でも、私が共通して感じた疑問は、「この監督はリアリティのある女(特に若い女の子)を描くのが、不得手なのではなかろうか?」というものだ。行定監督の作品に登場していたヒロインたちを目にして私が連想したのは、「少年漫画や青年漫画に登場しがちの、プロポーションが抜群で気が強くて実は健気な、男受けするステレオ・タイプのヒロイン」である。
その手の女性像が悪いと言っているわけではない。誰にだって理想はあるのだから。ただ、そういったヒロインからリアリティを感じ取ったり、そういったヒロインにシンクロしたりするためには、+αが必要なように私には思えてしまうだけだ。
「本物っぽさ」がなくて、男の人がとても好きそうな女の子たちが、なんとなく悩んで、なんとなく騒ぎを起こして、結局たいした結論も提示しないまま、なんとなく前向きになる。……今作『ユビサキから世界を』は、私にとって、それだけのイメージ映像である。「映画」には見えなかった。また、さまざまな要素がぼんやりと表現されているのだが、「抽象的」という綺麗なおべべを着せることで、「空疎」と「説明不足」の目くらましをしているのではないか、と皮肉に考えてしまった。
メインを務めた若い女優さんたちに魅力がないわけでは、決してない。ところで、リンネを演じた谷村美月さんは、「海賊版撲滅キャンペーン」で黒い涙を流しているあの少女だそうだ。印象の意味合いはともかく、映画ファンにとっては身近なお顔と言えるだろう。
上映会日:2006年8月30日(水)@イマジン・スタジオ

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