ごはんの支度をしながら、気の合う映画を想うのが好き。字書き屋・香ん乃がお贈りする、インフォメーション・シネマ感想文・雑記など。 
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「海のように深い稀有な瞳」を持つ女優たちを、よくこれだけ集めたものだ。

『LOVEHOTELS/ラヴホテルズ』
参考:LOVEHOTELS ラヴホテルズ@映画生活 LOVEHOTELS ラヴホテルズ-FLiXムービーサイト
2006年・日本・104分
監督・エグゼクティヴプロデューサー・脚本・編集:村松亮太郎
プロデューサー:三浦修
エグゼクティヴ・プロデューサー:松下順一 梅村宗宏
脚本:田中明子 小林恵美
音楽:KOTARO
出演:原田佳奈 片山けい 三浦敦子 サエコ
   榎木孝明 高橋一生 嶋田達樹 木下ほうか 他

 罪悪感も見せずにあっけらかんと二股をかけ続けるスズコ(原田佳奈)、親友の夫と長年不倫関係にあるサクラ(片山けい)、セックス・フレンドの男がほかの女を好きになったことにより自身の彼への執着を思い知らされるサチ(三浦敦子)、ラブ・ホテル経営者の娘として生まれたことでセックスに嫌悪感をいだき続ける愛(サエコ) ― 「ラブ・ホテル」を舞台に描かれた、四人の女たちによるオムニバス・ストーリー。

『かもめ食堂』を観に行ったときのことだった。上映前にロビーで映画のちらしを物色していたら、映像制作集団NAKEDが発行しているフリー・ペーパーが目に留まったのだ。その号では『LOVEHOTELS/ラヴホテルズ』という作品についての詳細な特集が組まれていた(あとで知ったことなのだが、この映画の監督である村松さんが、映像制作集団NAKEDの主宰でもいらっしゃるということなのである)。あらすじを一読しただけで、「絶対に観に行こう!」と即決した。日本特有で、かつ、現実的な性にあふれているラブ・ホテルという場所を舞台にした、女たちの生々しい物語。なんて私が好きそうな作品なのだろう、と観る前から夢中になってしまった。小さな映画館でのレイト・ショーのみという上映だったが、観に行って本当によかったと思っている。『君はまだ、無名だった。』もそうだったけれど、小規模な映画館でのレイト・ショーという地味なロードショーで瑞々しい日本映画に出逢えて、2006年の今年は嬉しい収穫が多いな、とほくほく実感する。

 さて、『LOVEHOTELS/ラヴホテルズ』。まったく異なるテイストの四つの物語が、とてもよくまとまった脚本と展開で、美しい演出とカメラ・ワークによって実現されている。手放しで褒めまくりたい手ごたえを得て、かなり好みだった。

 天真爛漫に二股をかけるスズコのエピソードは、現代的で、ポップで、爽やか。原田佳奈さんが演じたスズコには、「知り合いにいそうな、受け入れたくない親近感」を覚えてしまう。ぽっちゃりと愛らしく、ちゃっかり者で、女には嫌われやすいタイプの女の子。でも、男受けはすこぶるよいに決まっている女の子。

 友達の夫と不倫しているサクラのエピソードは、せつないリアリズムに満ちているのに詩的で、なにより、映像的に美しい。サクラを演じた片山けいさんの唇の在りかたと動きが、官能的なこと、この上なかった。また、名前はわからないのだけれど、このエピソードでさくらんぼを買いにきた少女の透明感と華がすばらしかった。

 セフレとの煮え切らない関係を続けているサチのエピソードは、ダイレクトにエロティックで、ちょっとアダルト・ビデオ的。それでも、十二分に美麗な映像。ストーリィ的には、四つのエピソードの中で最も痛みが薫ったように思う。こういう言いかたをしてよいのかどうかはわからないのだけれど、サチを演じた三浦敦子さんの「喘ぎ声」は、とても色っぽいだけでなく、……本物っぽさが満点で、びっくりした。グラビアで有名な三浦さんだけれども、演技の上手な人なのだな、と素直に感心した。

 ラブ・ホテル経営者の娘・愛のエピソードは、コミック的でコメディ調。「はちゃめちゃ」や「どたばた」という表現がぴったり。今回のエピソードの中では唯一リアリティに欠けているけれど、それは短所ではなくて長所。愛を演じたサエコさんの声は、いわゆる典型的な「アニメ声」。地声なのか、つくっているのかは、知らないけれど。

 それぞれのエピソードで主役を務めた四人の女優さん全員の瞳が、感激的なほど深くて鮮烈なのである。まるで「海」のような瞳だった。こんなにも印象的な瞳を持つ女性たちを、よく揃えたものだ。

「すごいな」と単純に驚いてしまうのは、四つのエピソードの個性の違いである。ひとりの監督が、これだけ味わいの異なるエピソードを撮ったのだと思うと、感嘆しないではいられなかった。村松監督は、ショート・フィルムの秀逸さで海外でも注目されている人だという。そう言われるととても納得だが、映像的に美しくて、しっかりと内容もあるショート・フィルムを得意とするこの監督に、今後長編も撮ってもらいたいものだ、と切に思った。

 ひとつだけ、残念だった点。女優さんたちと映像があまりにも綺麗すぎたため、「これ、現実にも絶対ありそう」という共感が少々薄れたのである。しかし、マイナスの感慨としては贅沢なのであろうから、この作品の魅力を損なう瑕とは言えまい。

観た日:2006年6月13日(火)@テアトル池袋

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