ごはんの支度をしながら、気の合う映画を想うのが好き。字書き屋・香ん乃がお贈りする、インフォメーション・シネマ感想文・雑記など。 
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 窪塚洋介の「手」と、エディソン・チャンの「瞳」 ― これらふたつが、この映画の宝物。

『同じ月を見ている』
参考:同じ月を見ている@映画生活
2005年・日本・106分
監督:深作健太
製作:黒澤満 坂上順 他
プロデューサー:近藤正岳 天野和人 他
原作:土田世紀
脚本:森淳一
撮影:北信康
音楽:藤原いくろう
出演:窪塚洋介 エディソン・チャン 黒木メイサ
   山本太郎 岸田今日子 松尾スズキ 他

 ごく普通の少年だった鉄矢(窪塚洋介)、神秘的な力を持つ少年で絵が得意なドン(エディソン・チャン)、深刻な心臓病を患っている少女・エミ(黒木メイサ) ― 仲のよい幼なじみだった3人に、運命が残酷な展開を示す。エミの自宅が火災に遭い、その放火犯としてドンが逮捕されるのだった。そんな悲しい事件から数年が経ったある日のこと、ドンが刑務所を脱走する。その頃、エミの心臓病を治したいがために医者になった鉄矢は、彼女との結婚を控えていた。

 観ているあいだ、なんだかんだ心中で文句をこぼしつつも、結局は泣いてしまった……。

 どういう点になんだかんだぷりぷりしたのかというと、まず第一に、エミっていう女が、私の最も嫌悪するタイプのヒロインだった、っていうこと。「家族愛の中で純粋培養されて、おしゃまながらも素直に育ち、愛らしく小生意気だけど、他者への思いやりにはあふれていて、おまけに『黒髪ストレート・ロング』っていう大半の男には好感度満点の古典的なヘア・スタイルで、男友達にはやたらと慕われる(=女友達は作ろうと思ってもできそうにないタイプの)エミ」に、私みたいなひねくれた女が好意を持つことは難しいのである。加えて、現実的な物語なのに、実際的な設定に粗が多い点も気になった。ネタバレになってしまうから詳しくは言わないけれど、「なんで捕まらないわけ!?」とか「あんたたち、どうやって食って生活してんだよ?」っていう辺り。

 でも、……泣いてしまった。

 おそらく、ドン役のエディソン・チャンの、……ありきたりな表現しかできなくて悔しいけれど、いわゆる「存在感」にやられてしまったせい。彼が演じるドンは、ほとんど台詞を話さない。多分、知的障害がある役柄として設定されているのだろうと思う。だからこそ、日本語に堪能でないと思われるエディソンがキャスティングされても問題がなかったのだろうが。

 アジアの映画界に疎い私。今作を観ている最中、「この役者、どっかで観たことある。それも、結構最近。でも、思い出せない。まあ、いいや」とかなんとか考えてた。……ネットで調べて判明。『頭文字D THE MOVIE』(日本語吹き替え版)で高橋涼介を演じたのが、エディソン・チャンだったのね。……高橋涼介だったときのこの人は、二枚目でニヒル(ごめん、死語だよね)な、ひたすら格好よい人だった。でも、『同じ月を見ている』でのドン役は、……俳優さんなんだから当然だけど、まったく違うの。別人。でもって、このドンの「瞳」がね、台詞がなくても饒舌なキャラクターとして生きていた。「目で語る」っていう技量の重み、久しぶりに思い知らされたよ。

 一時期、窪塚洋介さんにはまったことがあった。映画の『GO』や『ピンポン』、TVドラマ『ロング・ラブレター/漂流教室』などを続けざまに観たことが引き金だったのだ。ただ、好きは好きでも、「この人は、なにを演じても『窪塚洋介』なんだよなぁ」と感じながら観ていた。たとえば、私は黒柳徹子さんが主演した演劇を舞台で何作か楽しんだことがあるのだが、黒柳さんがどんな役柄を演じても、私の目には「黒柳徹子さんという人」にしか見えなかったのである。それがよいか悪いかではなくて、こういう個性の形もあるのだな、と判断していた。窪塚さんも同じで、役よりも先に「窪塚洋介」がそこにいた。それが彼の個性であり、窪塚洋介という役者なのだ、と思っていた。

 しかし、『同じ月を見ている』で鉄矢役を演じた窪塚さんには、「まず本人ありき」という印象はなかった。彼は「クボヅカヨウスケ」である前に、作中での鉄矢だったのだ。……リアリティに欠ける設定と内容のこの物語にリアリティが根づいたのは、窪塚さんの演じたナチュラルで生々しい鉄矢がいたからこそである。

 窪塚さんに関して、もうひとつ。この人の「手のひら」、特に「指」が、私には以前から鮮烈だった。男性の手から色気や情感を読み取る女性は多いと思う。『同じ月を見ている』での窪塚さんの手には、視覚的にも心的にも愉しませてもらえること請け合い。少なくとも、私にはそうだった。「手」に執着を覚える自覚のある女性には、この作品に映える窪塚さんの手もぜひ見ていただきたいなぁ、と感じた。

 監督の深作健太さんは、深作欣二さんの息子さんである。私は映画版の『バトル・ロワイアル』シリーズは未見だが。

観た日:2005年12月15日@渋谷TOEI1
2005/12/19 01:59    『誰も知らない』を観たよ。
 感じたのは、ただただ「怒り」。

『誰も知らない』
英題:"NOBODY KNOWS"
参考:誰も知らない@映画生活 誰も知らない-シネマトゥデイ
2004年・日本・141分
監督・プロデューサー・脚本・編集:是枝裕和
撮影:山崎裕
音楽:ゴンチチ
出演:柳楽優弥 北浦愛 YOU 木村飛影 清水萌々子 他

 12歳の明(柳楽優弥)は、学校へ行っていない。それ以前に、出生届すら出してもらえてないから、形式上は「この世に存在しない子供」だ。妹の京子(北浦愛)とゆき(清水萌々子)、弟の茂(木村飛影)もそう。ある日、母のけい子(YOU)が、明たちを残してどこかへ行ってしまった。けい子が突然消えてしまうのはよくあることだったが、今回はいつまで経っても帰ってこなくて……。

 2004年・カンヌ国際映画祭で、パルム・ドールにノミニーされたり、柳楽さんが主演男優賞を受賞したりして、ずいぶんと話題になった作品だ。

 この作品が素晴らしいのかそうでないのか、そういった出来についての批評を考えるのは、私には難しくて不可能。物語の内容が難しいというわけではない。どう捉えてよいか判断に悩んでしまうのだ。そして、自分の結論は出ない。ただ、結論なんてなくてもよいのだろう、という気はする。

 私が感じたのは、怒り。その内訳は、4人の子供に対して無責任極まりない母親への怒りが最も多くて、次に、あの子供たちと中途半端に関わっていながらも、もっと踏み込んだ干渉をしてやることができなかった・しようとしなかった周囲の人たちへの怒りが少しずつ。

 この作品を観た結果、私がいだいたのは、たまたまこうした「怒り」だったけれど、「哀しさ」や「せつなさ」を覚えた人もいただろうし、「やるせなさ」に苛まれてたまらなくなった人もいただろう。「かわいそうだ」と胸をつぶした人もいただろうし、また、「いや、あの子供たちは幸せだ」という意見を持った人だっていたかもしれない。「残酷な事件を美しく描きすぎだ」と腹を立てた人もいたかもしれない。

 そんなふうに、「なにかを強く感じる」ということができれば、この映画を観た意味があるといえるのではないか、私はそう思う。この作品を観て、「ふーん」で終わってしまわない限りは、どんな感慨でも有益だ、と。

 実話がモチーフになっている物語である。現実の事件は、とても壮絶で悲惨な結末を迎えた。この事件の実際の内容は残酷極まりないため、興味のあるかたは自己責任でご覧ください。「巣鴨子供置き去り事件」をぐぐった結果から、事件の詳細に関する記述があるサイトさまへ飛べます。

観た日:2005年12月18日@自宅にてDVD

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